PROJECT

光電融合技術の実現へ!光がつなぐ未来

トップ研究開発光電融合技術の実現へ!光がつなぐ未来IOWNってなに?~IOWN-GFへの参加背景~

IOWNってなに?~IOWN-GFへの参加背景~

クリップボードにコピーしました
facebook twitter linkedin pinterest

「独創と挑戦」により、新たな価値を創造する。
株式会社白山です。

今回の記事から株式会社白山・IOWN(アイオン)推進部が手掛ける研究開発の内容をお届けします。
記事の連載テーマは、「光電融合の実現へ!光がつなぐ未来。」です。

株式会社白山は、1947年の創業以来、常に顧客のニーズに向き合い、技術開発を行ってきました。
ここ20年では、「光接続」をキーワードとし、多心光コネクタ用部品「MTフェルール」をメインに光通信用コネクタの接続技術・製品開発に力を入れてきました。

さらに、2021年1月に新たにIOWN(アイオン)推進部という部署を創設し、「光電融合技術」に貢献する光接続技術・製品に着手しました。
IOWN(アイオン)という名前に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。

今回の記事では、IOWN推進部の創設の背景とその研究開発の内容の一部をお届けします。

 IOWN(アイオン)とは?

Innovative Optical and Wireless Network、4つの英語の頭文字を取った「IOWN」。
革新的な光および無線通信ネットワーク、それがIOWN(アイオン)です。

この社会におけるデータの通信量は飛躍的に増加しています。
私たちの生活が便利になる、快適になる、より良いエンターテイメントが提供される。
それは、私たちの身の回りに情報が多く流れるということです。

その結果、情報処理の中核拠点であるデータセンター内のトラフィック(情報量)が、特に最近では顕著に増加しています。

国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)によると、2015年を基準にした場合、インターネットのデータトラフィック量が約5倍の量になっていることが分かります。
また、データセンターの負荷率も徐々に高まっていることが分かります。

引用:IEA, Global trends in internet traffic, data centre workloads and data centre energy use, 2015-2021, IEA, Paris https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/global-trends-in-internet-traffic-data-centre-workloads-and-data-centre-energy-use-2015-2021, IEA. Licence: CC BY 4.0

また、OECD主要国の電力消費量も年々増加しているため、電力消費量を低減することが世界的に求められてきます。

引用: IEA (2021), Electricity Information: Overview, IEA, Paris https://www.iea.org/reports/electricity-information-overview, License: CC BY 4.0

データトラフィック量の増加によるデータセンター内の消費電力の増加懸念に対する解決策、高齢化社会や自動運転社会、新たな社会スタイルに適応したネットワーク提案、それがIOWNです。

具体的にいえば、光を中心とした高速大容量通信をベースとした膨大な計算リソースを持つコミュニケーションインフラ構想なのです。

IOWNは、おおきく3つの技術的な要素から成り立ちます。

  1. オールフォトニクス・ネットワーク:ネットワークから端末まですべてに光(フォトニクス)の技術を用いたネットワーク。
  2. デジタルツインコンピューティング:現実と酷似した仮想世界をデジタルに作ることで、実世界で適用可能な未来予測を可能にするコンピューティング技術。
  3. コグニティブ・ファウンデーション:ネットワーク、それを利用するネットワークサービス、デジタルツインコンピューティング技術など、すべての技術を繋ぎ、制御を実現するもの。

とりわけ、このIOWN構想を実現するうえで、非常に重要なのが、ネットワーク基盤技術である「オールフォトニクス・ネットワーク」になります。
この実現に向けて、具体的に3つの技術的な性能を達成する必要があると考えられています。(IOWN構想時点での技術をベースとする)

  1. 電力消費効率:100倍の電力効率による消費電力の削減(IOWN構想時点での技術から)
    例として、伝送メディア(光ファイバーケーブルなど)、伝送システム、情報処理基板(光電融合素子)の検討。
  2. 伝送容量の拡大:125倍のデータ伝送容量の拡大
    例として、通信波長帯域の拡大や高密度光ファイバーケーブルの検討。
  3. エンド・ツー・エンドの遅延を低減:遠隔地であっても、通信の送り手と受け手の通信上のタイムラグを200分の1に抑える。
    例として、待ち合わせ処理やデータの圧縮などを不要にすることで、実現を検討。

これらの3つの技術的な性能を達成し、オールフォトニクス・ネットワークの中核となるキー・テクノロジーが「光電融合技術」となります。

この技術こそが、2019年にNTTが実現を発表し、IOWN構想が打ち立てられるきっかけとなりました。

そして、このIOWN構想を実現するために、NTT、SONY、Intelが一丸となって、IOWN構想の実現と普及を関連する分野のパートナーと一緒に目指す団体として、IOWN Global Forum(IOWN-GF)が立ち上げられました。
2019年10月にこの団体の設立が発表され、2020年1月に米国の法人として設立されました。

IOWN Global Forum: https://iowngf.org/

今では(2023年4月時点)、既に100以上の企業や団体が加盟しています。

引用:IOWN Global Forum-Fact Sheets「Introduction to a Smarter World

IOWN-GFへの参加の背景

株式会社白山は、2021年1月にIOWN-GFに参加し始めました。
IOWN-GFに参加した背景、つまりはIOWN推進部の設立の背景としては、株式会社白山の光接続技術や製品がIOWN構想に貢献できると考えたからです。

IOWN構想の鍵といわれる“光電融合”技術は、従来電気伝送を行っていた箇所を光伝送に置き換え、電気は情報処理に特化できるようにする技術です。

その光電融合技術によって、電気伝送の距離が短くなる、または無くなることによって、電気伝送ケーブルによる放熱を抑え、その放熱を冷却する電力を抑える、というのが基本コンセプトです。

つまり、今よりも更に光伝送の部分が拡大する、光による接続箇所が増える、ということになります。

株式会社白山の主力製品であるMTフェルールは、データセンターなどに利用される多心光コネクタ(何本もの光ファイバーを接続するコネクタ)用部品です。

このMTフェルールは光コネクタの接続精度を決定づけるコア部品で、多品種のフェルールの製造・販売を行い、世界的にも高いシェアを誇っています。
超精密な樹脂成形部品であるMTフェルールは、特に外径125µmの光ファイバーが通るファイバー孔は、サブミクロン(1µm未満)の寸法精度を実現しています。

光伝送の部分が増えるということは、光接続の箇所が増えることになります。

いわば、光接続技術がさらに重要な技術になってくるということになります。

株式会社白山がMTフェルールで培った技術力や光通信分野における知見が、光電融合を利用したIOWN構想に寄与できると考えたので、IOWN-GFに加入いたしました。

白山の提供価値

では、株式会社白山は、いったいIOWN構想に具体的にどのような価値を提供できるのでしょうか?

光電融合技術に用いられる光電融合デバイスは、電気から光に置き換わる部分が増えるため、光接続の箇所が増えることになります。
そのため、光接続部品に新しい要求(小型化や耐熱性などの耐環境性)が求められる可能性が高くなってきており、その要求に応じた新たな製品の開発をしています。

また、IOWN-GFでは、自動運転などのインフラ、ライブやゲームなどのエンターテイメントなど、IOWNを実際に利用するユーズケース(用途や活用方法)の議論が盛んに行われています。
その一方で、IOWNの技術基盤であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN; All Photonics Network)などの構築に向けた詳細な技術要素を議論も活発にされています。

株式会社白山は、主に技術要素の議論に参加し、とりわけ伝送容量の拡大に関するグループで光接続に関する技術や情報、時には提案を行います。

この議論では、波長分割多重(WDM; Wavelength Division Multiplexing)において波長帯を従来よりも拡大する、波長帯毎のチャンネル数を増やすことで、伝送容量の拡大の検討が行われています。

また、空間分割多重(SDM; Space Division Multiplexing)において、マルチコアファイバーの利用や高密度なファイバーケーブルを利用することで、伝送容量の拡大を検討する協議もされています。
株式会社白山は、このSDMに焦点を置いて、技術課題に対する解決策の比較表を提案するなどしています。

IOWN-GF内では、国内外で活躍する業界企業が多く参加していることもあり、様々な視点での提案や議論が行われ、最終的にIOWNに関連する技術内容が纏まっていきます。

単純な製品や技術だけではなく、株式会社白山が把握している知見の提供も行うことで、IOWN構想の実現に貢献しています。

今後に向けて

株式会社白山は、IOWNがデータ消費増加に伴う消費電力の圧迫という課題に対する持続可能な解決策であり、高齢化社会など今後迫りくる社会の変化に柔軟に対応できるネットワーク構想だと感じています。

そのため、今後、IOWN構想のキー・テクノロジーである「光電融合」技術に焦点を当てた技術・製品開発を続けていき、株式会社白山が培った光接続の技術でその実現に貢献します。

特にIOWN推進部では、耐熱性および耐環境性に優れたセラミックを利用した多心フェルール(光接続部品)の開発に尽力しています。

IOWNの実現は2030年ですが、仕様確定は2024年までであり、2025年から徐々に社会実装される予定です。(既に、遅延に対するサービスは、2023年3月から始動)

その実現に向け、基礎開発および具体的な用途に落とし込んだ開発を行っていきます。
開発の様子や技術の詳細は、今後も発信する予定です。

編集後記

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

IOWNおよび株式会社白山のIOWN推進部の設立の目的など、少しはお分かりいただけましたでしょうか。

私は、今後IOWNがどのような影響を社会に与えることができるのか、非常にワクワクしています。私たちは中小企業ではありますが、その技術でこのような大きな取り組みに挑戦できるのが、非常に嬉しいです。

この構想は、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」にも繋がると確認しているので、ぜひ皆さんもチェックしていってください。

それでは、また、次の記事でお会いしましょう!

参照

IOWN Global Forum Website
IOWN Global Forum-Fact Sheets「Introduction to a Smarter World 」
IOWN Global Forum-Fact Sheets「Vision 2030: A Smarter, Better World for All 」
株式会社ビジネスコミュニケーション社「IOWN構想とその実現に向けたIOWN Global Forumの取り組み」
NTT R&D Website「IOWN構想とは? その社会的背景と目的」
NTT R&D Website「オールフォトニクス・ネットワークとはなにか」
日本電信電話株式会社ニュースリリース「光変調器を超省エネ化し、高速高効率な光トランジスタを実現~光電子融合型の超低消費エネルギー・高速信号処理へ前進~」

株式会社白山の製品情報はこちら

株式会社白山の公式Linkedin

クリップボードにコピーしました
facebook twitter linkedin pinterest

ご相談に応じて、研究開発の情報共有やサンプル提供が可能です。
お気軽にお問い合わせください。

CONTACT