次世代光通信のカギ、「IOWN構想」の実現に向けた開発とは?
今回はIOWN構想について、IOWN推進部の部長にインタビューを行いました。
本インタビューでは、株式会社白山でおこなっている「IOWN構想」に関する取り組みや、提供している技術的価値に関する内容に加え、開発を行う中での苦労談や、今後の展望について迫りました。
IOWN構想とは
IOWN(アイオン)構想とは何か教えてください
「IOWN構想」とは、最先端の光技術を使って豊かな社会を創るための構想です。
2030年の実現化をめざして2021年に日本電信電話株式会社、インテルコーポレーション、ソニー株式会社の3社が「Innovative Optical and Wireless Network (IOWN) Global Forum」を設立しました。
IOWNでは、情報通信システムの中で、電気で信号を送信している部分を徐々に電気から光ファイバを使うデータ通信に変えていき、膨大な情報処理を行う一方で、エネルギー消費を抑えていこうという取り組みをしています。
参照:NTT R&D Website 「IOWN構想とは? その社会的背景と目的」
株式会社白山では、どのようなことをしているのでしょうか
現在、白山では大きく分けて2つの取り組みを行っています。
1つ目は「日本電信電話株式会社との共同研究開発」です。
白山では、IOWN推進部を発足した時(2022年1月)から現在も継続して、研究開発を行っています。2022年の「NTT R&D FORUM -Road to IOWN 2022」では共同研究を行った成果発表も行いました。
2つ目はIOWN Global Forumに参加し活動を行っています。
IOWN構想で検討されているユースケース(使用事例)、ハードウェアに関することや、データセンター内の装置をどのようにしていくか、などを話し合うワーキンググループに参加し、白山の技術を提案しています。
白山が、IOWN構想に提供できる技術的な価値について教えてください
光電融合を実現するためには、光ファイバなどの伝送媒体を通る光を高効率に接続しながら光信号を取り出す必要があります。
それをクリアできるような光接続の構造を実現することがIOWN構想に提供できる技術的な価値だと考えています。
例えば、白山ではMTフェルール(複数の光ファイバ同士を一括でつなぐことができる多心光コネクタ部品)の製造を行っており、その技術やノウハウを活かして、研究開発を行っています。
MTフェルールの場合、サイズが大きすぎる、要求される温度に対して耐熱性がない等の課題があります。
しかし、お客様からは「リフローなどの高温環境下でも使用可能なフェルール」、「より小さいサイズのフェルール」が欲しいといったご要望をいただきます。
それをクリアするために現在のMTフェルールの強みを活かしつつ、より良いものを作れないか、研究開発を行っています。
具体的にはどのような製品を開発しているのでしょうか
磁石を利用した小型コネクタを共同開発しています。
磁力を利用し、光接続を実現する研究をしています。
ほかにも、白山の技術としてセラミックスの光接続部品「CMF®(Ceramic Multifiber Ferrule)」の開発を進めています。
CMF®のファイバ孔精度は通常のMTフェルールと同等でありながら、セラミックスを使うことで1,000℃の熱にも耐えることができます(MTフェルールは約100℃以上で徐々に温度の影響を受けます)。
また、サイズについても、通常より小さいものや、大きいものを作ることも可能です。
開発を行う中で特に苦労していることがあれば教えてください
開発している製品の評価方法を決めることに苦労しています。
研究開発では、これまで行ってきた評価方法を活かしつつも、新しい技術に合わせて新しい評価方法を採用する必要や、評価するための構造をつくる必要があります。
例えば、MTフェルールにはJIS(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)やIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準化会議)があり、「この評価を行い、数値を満たしていればMTフェルールとして合格になる」といった規格が決められています。
しかし、開発した製品には引用可能な規格がないため、自分たちで評価方法を決めなければいけません。
何をもって良しとするか自分たちで決めて保証をする必要があるため苦労しています。
お客様の要望と合致するものを提供するためにも共同研究先や、他のメーカーの方から意見を頂きながら、改善や検討を繰り返しています。
現在の開発状況と今後の展望について教えてください
現在の開発状況
光電融合技術の実現のためには、基板上に光トランシーバーとスイッチを実装したCo-Packaged Optics (CPO)(光通信のための設備)が必要です。そこで、白山では「CMF®」の製品開発をしています。
当初の開発予定より少し遅れているものの、順調に進んでいます。
また、小型多心コネクタ(MTCT®コネクタ)という通常のMTフェルールの厚みや大きさなどを小さくしたものを活用するための提案もしています。
ほかにも、「GrinEB®」と呼ばれる光のビーム径を大きくして空間伝送が可能なコネクタの研究開発も進めています。
例えば、10ミクロンで出ている光のビームを50ミクロンに大きくすることができないか開発をしています。
今後の展望
Co-Packaged Opticsについてお客様のニーズをとらえた製品開発は出来ているため、IOWN2.0 1)に向けてさらに開発を進めていきたいと考えています。
そしてIOWNは3.0、4.0…と続いていくため、先を目指した製品開発を行っていきたいです。
また、IOWNは光接続のイメージが強いですが、クリーンエネルギーの実現も目標に入っています。
白山では現在、光接続に関する研究開発をずっと行っているため、消費電力の削減や、CO2排出量を下げることにも貢献できるような製品開発や、事業化も行いたいと考えています。
1) NTTはIOWN構想実現の核となる光電融合デバイスを開発中。光電融合デバイスの開発計画は公表されており、第一世代・第二世代をIOWN1.0、第三世代をIOWN3.0としており、既に第五世代までのロードマップが存在する。
参考:NTT技術ジャーナル「NTT R&D フォーラム – Road to IOWN 2022 特集」
その他、参考となる記事はこちらから
参考:NTT STORY 「圧倒的な低消費電力化を実現する「光電融合技術」デバイス製造 新会社 記者会見」
記事作成者のコメント
これまでの株式会社白山で作ってきた製品のノウハウや技術を活かした当社ならではのIOWN構想に関する取り組みについて知っていただけましたでしょうか。
光電融合技術の実現や、IOWN2.0に向けた取り組みを行っている白山に少しでも関心を寄せていただけると幸いです。
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