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超精密樹脂成形への挑戦〜大容量光通信インフラへの貢献〜

トップ研究開発超精密樹脂成形への挑戦〜大容量光通信インフラへの貢献〜開発秘話: MTフェルールの誕生と進化

開発秘話: MTフェルールの誕生と進化

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株式会社白山は、30年以上にわたりフェルールの開発を続けてきました。現在も現役である初期開発者が、MTフェルールの開発秘話を語ってくれました。話から、MTフェルールの開発がどのように始まり、どのような困難を乗り越えてきたのかが明らかになりました。

開発の始まり

MTフェルールの開発は、NTTからの依頼がきっかけでした。株式会社白山はNTTから技術供与を受け、MTフェルールを世界で初めて開発した企業の一つです。NTTは将来的に光通信が主流になることを見越して、光ファイバ技術の開発を進めており、MTフェルール製造の技術供与は光通信技術の普及と進化を目指す重要なステップでした。

最初はエポキシ樹脂を使ったトランスファー成形法での開発が進められましたが、試行錯誤の連続で、当初から多くの課題に直面しました。エポキシ樹脂は吸水性が高く、フィジカルコンタクトができないという問題に直面し、さらにトランスファー成型法は成形タクトが長くコスト的なデメリットもあり、低吸水性であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)への切り替えが決定されました。PPSは流動性が悪く、成形が難しい材料でしたが、材料メーカーと共同で材料開発を進めました。

初代開発者

材料の選定と開発

PPSの成形には特別な金型が必要であり、かつ、成形機も標準の成形機では成形時に問題があったので、特殊仕様として改良した成形機を開発しました。また、金型においても、PPSはガラス材料を利用しているため、摩耗が激しく、その摩耗を防ぐために、専用金型を独自設計しました。材料開発の初期段階では、PPSの流動性が悪く、成形が困難でした。例えば、最初の試作品では、フェルールの研磨時に材料の一部が崩落し、ファイバに傷を発生させるなど、材料の課題もありました。そこで、材料メーカーと協力し、PPSの改良を進めていきました。

成形機の改良金型の摩耗を防ぐ工夫

PPSの成形には高温と高圧が必要であり、これにより成形機や金型の摩耗が問題となりました。この問題を解決するために、成形機の改良が行われました。また、金型の摩耗が激しく、頻繁なメンテナンスが必要でした。さらに、金型の設計にも工夫が施されました。また、成形時の成形条件も適切に管理することで、摩耗を防ぐことができました。

試行錯誤と成功

開発初期には、金型の破損や品質の安定性に問題がありました。特に、金型の破損は頻繁に発生し、製品の品質に大きな影響を与えていました。金型の設計を見直し、強度を向上させるための改良を行いました。また、成形条件の最適化にも取り組み、成形温度や圧力の調整を行うことで、金型の寿命を延ばし、製品の品質を安定させることに成功しました。 さらに、品質管理の強化も行われました。製品の寸法精度や外観品質を厳しくチェックし、不良品の発生を最小限に抑えるための対策が講じられました。これにより、製品の信頼性が向上し、顧客からの評価も高まりました。

白山のMTフェルール

米国大手通信キャリア認定と市場拡大

最終的には、12心の低損失MTフェルールの量産に成功し、米国大手通信キャリア向けの製品として認定を受けました。この時の金型が、現在も量産されている12心の低損失MTフェルール用の金型の元になる第一号品です。

同通信キャリアからの認定を受けた後、白山はさらに多くの顧客からの注目を集めるようになりました。特に、米国の通信キャリアやデータセンター事業者からの需要が急増しました。これにより、白山は生産能力の拡大と品質管理の強化に取り組む必要がありました。 製品の品質を維持しながら生産効率を向上させるために、新しい生産ラインの導入や自動化技術の採用を進めました。また、技術者の育成にも力を入れ、若手技術者に対しては実践的なトレーニングを行い、熟練技術者のノウハウを継承させました。 さらに、白山は新しい市場への進出も積極的に行いました。特に、アジアやヨーロッパの市場においては、現地のパートナー企業との協力を強化し、現地販売を推進しました。この結果、白山のMTフェルールは世界中で高い評価を受けるようになり、同社の市場シェアは大幅に拡大しました。

今後の展開と将来に向けての計画

白山は、今後もMTフェルールの技術革新を続ける計画です。特に、低損失フェルールや超多心フェルールの開発に注力し、さらなる高性能化を目指しています。また、新しい材料の研究開発も進めており、耐熱性や耐久性に優れたフェルールの実現を目指しています。 さらに、光通信技術の進化に伴い、白山は次世代の光接続技術の開発にも取り組んでいます。特に、光ファイバと光導波路の接続技術や、光トランシーバ内の光接続スペースを削減する技術、光実装基板(Co-Packaged Optics)に耐えうるMTフェルールの開発に注力しています。これにより、より高密度で効率的な光通信システムの実現を目指しています。

CMF®(Ceramic Multifiber ferrule)
MTHR®(Reflowable MT Ferrule)

まとめ

MTフェルールの開発は、数々の技術的な困難を乗り越えた末に実現された成果であり、その背景には開発者たちの粘り強い努力と創意工夫がありました。特に、専用のPPS材料の開発や金型の摩耗を防ぐための工夫など、製品の品質と生産性を両立させるための技術的課題を一つひとつ克服してきたことが、白山の現在の成功に直結しています。米国大手通信キャリアからの認定を受けたことを契機に、白山は生産能力の拡大や品質管理体制の強化を進め、世界市場での信頼を獲得し、現在では世界シェア2位という地位を築いています。

こうした成果の裏には、今も現役で活躍する開発者の存在があり、彼は次世代の光接続技術の開発に取り組むと同時に、若手技術者の育成にも力を注いでいます。若手メンバーとともに新たな挑戦を続ける姿勢は、白山の技術力の継承と進化を象徴しており、今後もより高性能で持続可能な製品の開発を通じて、光通信市場へのさらなる貢献が期待されています。

これからも白山の挑戦と成長に、ぜひご注目ください。

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