フォームファクターの最新トレンド – What’s VSFF? –
データセンターにおける技術トレンド
データセンターの需要は、AI技術の普及やクラウドサービスの拡大に伴い急速に高まっています。2020年から2030年までの間に通信量が約7倍に増加すると予測される中、データセンターの高密度化と省電力化が喫緊の課題となっています。この課題に対応するため、光トランシーバーと光コネクタのフォームファクターの小型化が進んでいます。
※フォームファクターとは、ハードウェアの形状や大きさを決定する要因となるものの総称。具体的には、ハードディスクなどの記憶装置やマザーボードの配置、光トランシーバーや外部コネクタ類の規格や配置などを表しています。
光トランシーバーの小型化
光トランシーバーは、データセンター内で電気信号を光信号に変換し、高速かつ効率的なデータ伝送を可能にする重要な光デバイスです。近年、小型化と高速化が急速に進んでおり、従来の100Gや200Gモジュールから400G、800Gへと進化しています。
小型化の変遷
光トランシーバーの小型化と高速化は、データセンターの効率化に大きく貢献しています。2012年頃には5×7インチ(12.7cm×17.8cm)の大きさだった光トランシーバが、現在では約2cm×8cmのQSFP-DDサイズまで小型化されています。同時に、伝送速度は100Gbit/sから400Gbit/sへと高速化し、消費電力も4分の1に低減されています。
技術トレンド
最新の技術トレンドとしては、400Gbpsや800Gbpsの伝送速度を実現する光トランシーバーの開発が進んでいます。これらの高速トランシーバーでは、シリコンフォトニクス技術を活用した集積化も進展しており、従来の光デバイスを大幅に小型化し、電子回路との統合を可能にしています。
光コネクタの小型化
光コネクタも同様に小型化が進んでおり、従来のMPOコネクタよりも高密度な接続を実現する超小型フォームファクター(VSFF: Very Small Form Factor)コネクタが注目を集めています。
技術トレンド
SENKO アドバンスコンポーネント
SENKOアドバンスが開発したSN-MTコネクタは、VSFFコネクタ市場に新たな選択肢を提供しています。SN-MTコネクタは、16心版でMPOコネクタの2.7倍の密度を実現し、同時にSNコネクタと同じフットプリントを維持する巧妙な設計を採用しています。低損失(シングルモードで挿入損失0.15dBの実力値)や操作性の向上(プッシュプルブート)など、高性能と使いやすさを両立しています。
USConec
USConecが開発したMMC(Multi-fiber Miniature Connector)コネクタは、従来のMPOコネクタに比べて3倍の接続密度を実現した画期的な製品です。新たに開発されたTMT(Tiny MT)フェルール技術により、従来のMTフェルールの信頼性の高いアライメント構造を継承しつつ、さらなる小型化を達成しました。MMCコネクタは、低挿入損失(IECグレードBの性能)や簡単な着脱(DirectConec™プッシュプル技術)など、高性能と使いやすさを兼ね備えています。
デバイスの小型化によるデータセンターメリット
メリット
- 高密度化:小型化により、同じスペースにより多くのデバイスを設置できるため、データセンターの容量を大幅に増やすことができます。
- 省電力化:小型化に伴い、デバイスの消費電力も低減されるため、データセンター全体の電力効率が向上します。
- 高速化:小型化により信号の伝送距離が短くなるため、より高速なデータ通信が可能になります。
- コスト削減:スペース効率の向上により、設備投資や運用コストを抑えることができます。
- 柔軟性の向上:小型デバイスを使用することで、データセンターのレイアウトや構成をより柔軟に変更できます。
新規デバイス採用による課題
- 互換性:新しい小型デバイスと既存のインフラストラクチャとの互換性を確保する必要があります。
- 冷却効率:デバイスの高密度化に伴い、効率的な冷却システムの設計が求められます。
- 管理の複雑化:より多くのデバイスを管理する必要があるため、効率的な運用管理システムが必要になります。
- 初期投資:新しい技術を導入するための初期投資が必要になります。
- 技術者のスキルアップ:新技術に対応できる技術者の育成や確保が課題となります。
まとめ
データセンターの高密度化と省電力化の要求に応えるため、光モジュールと光コネクタの小型化が急速に進んでいます。SENKOアドバンスのSN-MTコネクタやUSConecのMMCコネクタなど、VSFFコネクタの登場により、データセンターの効率性と性能が大幅に向上しています。
これらの小型デバイスの採用により、データセンターの高密度化、省電力化、高速化、コスト削減、柔軟性の向上などの多くのメリットが得られます。一方で、互換性の確保や冷却効率の向上、管理の複雑化への対応など、新たな課題も生じています。
今後、5G通信やIoTの普及、AIの発展に伴い、データセンターの重要性はさらに高まると予想されます。小型フォームファクターデバイスの進化は、この需要に応える重要な技術となるでしょう。
参考:
・USConec/MMC Connector
・SENKO/SN-MT Connector
・QSFP-DD MSA
・OSFP MSA
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