細径MTフェルール ~高密度光コネクタの進化~
次世代データセンターの高密度配線の実現へ
光通信技術の進化が加速する中、データセンターの高速化・大容量化への要求はますます高まっています。この需要に応えるべく、白山は最先端の光コネクタ技術を開発し続けています。今回は、その中核を担う「細径MTフェルール」について詳しくご紹介します。
細径MTフェルールとは?
細径MTフェルールは、従来の光ファイバよりも細い「細径ファイバ」を使用する多心光コネクタ部品です。通常の光ファイバのクラッド径(光を閉じ込める部分の直径)が125µmであるのに対し、細径ファイバはわずか80µmという極細サイズを実現しています。
この細径化により、以下のような特徴が生まれます:
- 高密度実装:より狭いスペースに多くのファイバを収納可能
- 柔軟性向上:ケーブルの曲げ半径が小さくなり、配線の自由度が増加
- 軽量化:ケーブル全体の重量削減に貢献
白山の細径用MTフェルールは以下の特徴を持っています。
- 細径用光ファイバ孔
80µmクラッド径用の光ファイバ孔(80µm) - 高精度な光ファイバ孔
通常のMTフェルールの光ファイバ孔(125µm)よりも細いファイバ孔だが、
シングルモード低損失レベルのファイバ孔精度を実現。 - 接続互換を意識したファイバピッチ
光ファイバピッチは従来のMTフェルールとの接続互換を実現するため、250µm ピッチとなっています。※光ファイバ孔径以外はすべて通常MTフェルールと同様の設計となります。


なぜ細径MTフェルールが必要なのか?
既存システムとの互換性維持
細径MTフェルールの最大の利点は、既存の光コネクタシステムとの互換性を保ちながら、高密度化を実現できることです。従来のMTフェルールでは、ファイバピッチ(ファイバ間の距離)が250µmでしたが、細径MTフェルールでは同じピッチを維持しつつ、ケーブル配線の軽量化等に繋げることができます。

シリコンフォトニクスとの親和性
近年注目を集めているシリコンフォトニクス(光回路をシリコンチップ上に集積する技術)では、狭ピッチでの光素子配列が求められます。細径MTフェルールは、この要求に応える理想的なソリューションとなります。
具体的な応用例
光モジュールとの中継コネクタ
細径MTフェルールは、シリコンフォトニクスチップと従来の光ファイバシステムを繋ぐ重要な役割を果たします。チップ側の狭ピッチ(125µm)配列と、従来の光ファイバシステムの250µmピッチを、スムーズに接続することが可能です。

Co-packaged Opticsへの応用
AI(人工知能)やビッグデータ処理の進化に伴い、「Co-packaged Optics」と呼ばれる、電気回路と光回路を1つのパッケージに統合する技術が注目されています。細径MTフェルールは、この技術の実現に不可欠な高密度光接続を提供します。
細径MTフェルールの重要性
データセンターの高速化・大容量化に伴い、光通信インフラの高密度化は避けられない課題となっています。細径MTフェルールは、この課題に対する革新的なソリューションを提供します。
- スペース効率の向上:限られたラックスペースでより多くのデータを処理可能に
- 作業コストの削減:ケーブル本数の削減により、配線作業コストを低減
- 柔軟な設計:狭小空間での配線が容易になり、新しい光モジュール設計の可能性を広げる
さらに、シリコンフォトニクスとの親和性が高いことから、次世代の光回路実装技術との統合も容易です。これにより、データセンターの処理能力と効率性を飛躍的に向上させることが期待されます。
まとめ
細径MTフェルールは、データセンターの未来を支える重要な技術です。高密度光伝送を可能にし、既存システムとの互換性を維持しながら、次世代の光通信インフラの構築に貢献します。
白山は、この革新的な技術を通じて、お客様の高度な要求にお応えし、データセンターの進化を支援してまいります。細径MTフェルールの導入をご検討の際は、ぜひ当社にお問い合わせください。共に、高速で効率的な通信インフラの未来を築いていきましょう。
参照リンク
・各種シングルモードファイバ「ClearLite®」(古河電気工業株式会社)
・Corning® RCBI Optical Fiber(Corning Corporate Site)
・那須秀行、井出 聡、小山二三夫 著「データセンター光インタコネクション技術」(電気情報通信学会誌、Vol.106, No.2, pp.106-113)
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