耐リフローMTフェルールとは?~CPO/OBO対応MTフェルールの開発~
データセンターの進化に伴い、光接続技術も急速に進歩しています。特に、Co-Packaged Optics(CPO)やOn-Board Optics(OBO)といった次世代技術の普及により、光コネクタの高性能化と耐熱性の向上が求められています。このニーズに応えるため、株式会社白山が開発している耐リフローMTフェルールは、従来のMTフェルールに比べて高温環境でも安定した性能を発揮し、次世代データセンター向け光エンジンに最適な光接続ソリューションとして期待されています。
1. 耐リフローMTフェルール(MTHR®)とは?
MTフェルールとは、多心光ファイバを正確に整列させ、光通信の接続性能を高めるための重要な部品です。特に、MPO(Multi-Fiber Push On)コネクタの中核コンポーネントとして広く使用されています。データセンターや通信インフラでの高密度配線に対応するため、MTフェルールは不可欠な存在です。
しかし、近年の光通信市場では、消費電力の削減に対応する新たな光通信デバイスの技術であるCPO/OBO技術が開発されています。これらの技術では、光エンジンを基板に直接実装する必要があります。
そのため、光コネクタもリフロー工程(はんだ付け時の高温環境)に耐える必要があります。従来のMTフェルールは、高温環境下では寸法変化や光学性能の劣化が問題となっていました。
これに対し、白山の耐リフローMTフェルール(MTHR®)は、260°Cのリフロー温度に耐えつつ、寸法変化、特に光ファイバ孔の変動を最小限に抑える設計となっています。
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2. 耐リフローMTフェルール(MTHR®)の特長
2.1 高耐熱性の材料
耐リフローMTフェルール(MTHR®)には、従来のMTフェルールの材料であるポリフェニレンスルフィド(PPS)とは異なる材料が使用されています。そのため、260°Cのリフロー工程を経ても寸法安定性を維持できます。さらに、耐久性も向上し、繰り返しの嵌合でも安定した光学性能を提供します。
2.2 高精度なフェルール設計
フェルールのファイバ孔の位置精度(偏心量)を0.7µm以下に抑え、リフロー後のファイバ芯ずれを最小限にします。現在、シングルモード用シリーズとして、12心/16心/24心の対応が可能となっています。
2.3 耐リフローブーツ及びキャップ
耐リフローMTフェルール用の専用付属品として、耐リフローブーツ及びキャップも開発しています。特にフェルール用キャップは、リフロー工程時のフラックス気化によるMTフェルール端面の汚れを防ぐ役割を担っています。
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3. 想定される使用事例
MTHR®は、光ファイバピグテール付きの光エンジンへの使用が想定されています。COBO*** が2022年に発行した技術白書に記載されているリフロー実装された光エンジン装着の光ファイバピグテールの場合、そこに使われるコネクタは、光エンジンと同様に実装リフロー工程に入ってしまうため、耐リフロー性が求められます。
“One method of achieving this optical separation is for the OE to integrate a short length of fiber ending with an optical connector (i.e. a fiber pigtail, See Figure 3-2). Again, because the fiber pigtail is permanently fused to the OE, it too must be compatible with solder reflow temperatures.”
– Citing the Page 16 of ‘Design Considerations of Optical Connectivity in a Co-Packaged or On-Board Optics Switch’
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図は「Design Considerations of Optical Connectivity in a Co-Packaged or On-Board Optics Switch」を元に白山で作成。
***COBOとは?:現 Advanced Photonics Coalition の前身団体。COBOは、Consortium for On-Board Optics(オンボード光学部品のコンソーシアム)の略称で、ネットワーク機器の製造におけるボード搭載型光学モジュールの使用を可能にするための仕様と業界ガイダンス文書を開発する業界団体。
4. 社内でのテスト結果について
白山内での試験としては、260℃の温度環境下で、10分加温し、その前後のMTフェルールの寸法変動、特にファイバ孔の偏心量の確認を行っています。実際のリフロー処理は250℃前後で数分にはなりますが、各社によって実際の条件が異なる可能性があるため、上記温度環境でのテストを行いました。その結果、変動後のファイバ孔偏心量も0.7µm以下に抑えることができました。
既にサンプル供給は行われており、各用途に合わせ、光ファイバ組立実施したうえで、評価されています。
5. まとめ
白山の耐リフローMTフェルールは、次世代の光通信技術に対応した革新的な光接続ソリューションです。従来のMTフェルールに比べ、
- 高温リフロー環境での安定性
- 加温後の高精度なファイバ孔精度の維持
- CPO/OBOとの親和性
といった特長を持ち、CPO/OBO技術に最適なMTフェルール(多心光接続ソリューション)となることが期待されています。光通信技術の進化に合わせ、継続的な開発をしています。
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