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排熱発電技術の普及に挑戦~未利用排熱の利活用に向けて~

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排熱発電技術 とは?~熱電変換技術の用途開発~

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「独創と挑戦」により、新たな価値を創造する。

株式会社白山です。

今回の記事から株式会社白山・熱電開発部が手掛ける研究開発の内容をお届けします。

記事の連載テーマは、「排熱発電技術の普及に挑戦~未利用排熱の利活用に向けて~」です。

熱電開発部は、熱電モジュールの研究開発を手掛けています。

熱電モジュールは電気を熱に、熱を電気に変える電子部品ですが、株式会社白山では、そのモジュールを利用した用途開発にも取り組んでいます。

この連載では、その用途のひとつである排熱発電についてお伝えしていきます。

排熱発電 とは?

排熱発電技術の概要について、お伝えいたします。日本国内でも多くの未利用排熱が発生しています。その現状を説明し、排熱発電技術には今後どのような技術課題があるのか、お伝えしていきます。

排熱発電 とは?

排熱発電とは、産業施設や発電所などで発生する排熱を再利用し、電力を生成することを指します。
排熱(廃熱)は通常、熱エネルギーとして捨てられるため、これを回収して電力を生成することでエネルギーの効率化を図ることができます。

あくまで一例にはなりますが、製鉄所や化学工場などで高温の排ガスが発生します。
これらの排ガスは一般的には大気中に排出されますが、排熱発電を利用すると、これらの排ガスを熱交換器に送り込み、蒸気を発生させることができます。

この蒸気をタービンに送り込むことで、機械的エネルギーを電力に変換することが可能です。
(例:排熱回収による蒸気タービン発電)

未利用排熱の現状

日本の工業施設や発電所では、大量の排熱が未利用のまま捨てられています。

2019年の産業分野の排熱実態調査報告書によると、排ガス設備からの年間排熱量は99,787.9TJであり、調査対象設備への年間投入エネルギー量が 1,286,179 TJ になるので、投入エネルギー量の約 8 %に当たる熱が排熱として発生しています。

これらの排熱はボイラ、焼成炉、燃焼炉、加熱炉などの設備から発生しています。
業界としては、食料品、繊維、パルプ・紙、石油業界、鉄鋼業界など上記設備を積極的に使う分野が排出先としては挙げられています。

この報告書によれば、発生する排ガスの温度帯は99℃未満から500℃以上の中で分類されていますが、200℃以下の温度帯の排ガス排出量がいずれの業界でも割合として多くなっています。

この未利用の排熱の存在は大きなエネルギーロスとなっており、環境負荷の削減やエネルギー効率の向上の観点からも、有効活用が求められています。

この排熱の未活用の現状に対して、日本政府も積極的な技術開発を促進し、排熱エネルギーを有効活用できるような社会になるような取り組みを行っています。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発事業を取り仕切っています。
その事業の中で、熱マネジメント(3R: Reduce, Reuse, Recycle)のための技術開発を促進しています。

NEDO事業の中でも、排熱発電技術に関するプロジェクトは存在しており、大きな注目を浴びています。

排熱発電技術の課題

排熱発電は、工場などから排出される排熱を利用して電力を生成する技術です。

この排熱発電技術を利用することで、エネルギーの有効利用が期待されますが、以下のような課題が存在します。

  • 効率の問題: 一般的に、低温の排熱(200℃)を利用した発電の効率(~5%)は低いです。
    高温の排熱を利用する場合は、効率が向上します。しかし、一般的な発電方法(太陽光発電などの自然エネルギーによる発電)と比べて、低い場合が多いです。

  • 初期投資: 排熱発電システムの導入には、設備投資が必要です。この初期投資のコストが高い場合、投資回収期間が長くなる可能性があります。

  • 設備の耐久性: 高温の排熱(300~400℃以上)を直接利用する場合、設備の耐久性や保守・メンテナンスが課題となることがあります。

  • 変動する排熱量: 工場の運転状況によっては、排熱の量や温度が変動することがあります。
    この排熱量の変動により、発電量も変動する可能性があります。

  • 環境への影響: 排熱発電システムの導入により、冷却水の使用量が増加する場合があります。
    冷却水の使用増加により、水資源の消費や環境への影響が懸念されることがあります。

  • 技術の選択: 排熱発電の技術は多岐にわたります。バイナリー発電や小型蒸気発電、熱電発電など、適切な技術の選択が必要です。

排熱発電という技術が社会に普及していくために、上述のような課題をひとつずつ解決していく必要があります。
未利用排熱の有効活用を目指し、白山の熱電発電技術を利用した排熱発電システムを検討しています。

熱電変換技術を利用した排熱発電とは?

ここでは、具体的に株式会社白山が研究開発を行っている熱電変換技術を利用した排熱発電について、説明していきます。

熱電変換技術を利用した排熱発電 について

熱電変換技術を利用した排熱発電技術は、温度差を直接電気エネルギーに変換する技術です。熱電モジュールという温度差により発電を行う電子部品を利用し、工場などの排熱と冷却水との温度差で発電する仕組みとなっています。

Hakusan_Thermoelectric module
熱電モジュール(ペルチェモジュールとも言われる)

株式会社白山は、熱電モジュールの研究・開発を行っています。その研究・開発で得られた熱電モジュールへの知識や経験を応用し、排熱発電に適用できないか、用途開発として検討・実証を行っています。

熱電モジュールを利用した排熱発電には、以下の利点があります。

  • 単純な構造: 熱電モジュールは動的な部品(モーターやタービンなど)がないため、構造が単純であり、保守やメンテナンスが容易です。

  • 静音: 動的な部品がないため、動作音がほとんどありません。

  • 小型化可能: 熱電モジュールはコンパクトなので、限られたスペースにも設置可能です。

  • 温度差があれば発電可能: 低温の排熱(~200℃)でも、ある程度の温度差があれば発電が可能です。

排熱発電ユニット SteamBattery®

株式会社白山が現在実証を行っている排熱発電ユニットは、SteamBattery®(スチームバッテリー)という製品となります。

SteamBattery®は、常圧排蒸気を電力に変換するユニットで、フラッシュ蒸気やプロセス冷却処理後に発生する小規模な排熱(排蒸気)を利用することができます。

小型なので、このユニットのために大きな工事をすることもなく、手軽に設置でき、小型の電子機器などに発電した電力を利用することが可能となります。

SteamBattery_Function_Concept


駆動部品や特殊な作動流体もないため、メンテナンスも容易で、大量の熱源も必要ではないので、排熱の利活用を検討する際の小規模実証もすぐに行うことができます。

想定利用シーン

このSteamBattery®は、化学工場や食品工場、繊維工場など日常的に熱源として蒸気を利用している事業所での利用を想定しています。

蒸気を熱源として利用する工場では、熱利用後に排管から高温ドレンと共に微量の蒸気が出ています。
そのような少量の熱源を利用した温度差による発電を想定しています。

Flast steam from a factory
ドレン配管から出る微量の蒸気

排蒸気を利用した発電で得られた電気の利用用途として、蒸気システム(機器、配管)の健康状態を確認することを提案しています。(健全性確認)

具体的には、得られた電気で「蒸気(ドレン)のpH測定」や「ドレン量測定」を行い、蒸気システムに問題が発生していないか監視するものです。

蒸気システムの監視により、異常を発見し、対応することで蒸気システムの長寿命化が図れます。
メンテナンス費削減やメンテナンスに伴う生産停止期間の短縮可能だと考えています。
システムの確認を行うには、ドレン配管近くに電源が必要となりますが、通常電源が無い場合が多いです。

SteamBatteryは、蒸気が得られる場所であれば、一時的な小型電源として、利用することができるため、蒸気システムの健全性確認を行う際にも役立つと考えています。

現在、この排熱発電ユニットに関心のある複数の企業様から、お問い合わせをいただき、数か所にて実証試験も行っています。

今後は、白山の排熱発電ユニットの実証やユニットを利用した具体的な取り組みに関する情報を発信していきます。

まとめ

今回の記事では、社会的に未利用排熱の活用が叫ばれる中、株式会社白山が熱電モジュールを利用した排熱発電の開発に至った経緯を説明いたしました。

排熱発電ユニットは、小型の蒸気利用ツールとして可能性を秘めています。
社会に実装するためには、まだ課題はありますが、それらの技術課題も乗り越えていき、未利用排熱の有効利用の一助になるよう、尽力していきます。

排熱発電ユニット資料ダウンロード

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