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レアメタルフリー熱電モジュールの開発

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レアメタルフリー材料に着目!ゼロから始めた熱電開発の裏側に迫る

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今回は熱電開発について、R&D本部長にインタビューを行いました!

本インタビューでは、株式会社白山ならではの低コストかつ環境に優しい材料を使用し、そこからモジュールの作製、システム開発までを行っている『熱電開発』についてどのようなものなのか、研究開発に至るまでの経緯から今後の展望についてお話します。

熱電変換とは

熱電変換とはどのようなものか教えてください。

熱電開発部では熱電モジュールの開発をしています。
熱電変換では、モジュールに電気を流すことで冷やしたり、温かくしたりすることが出来ます。
また、反対に温度差を作ることで発電を行うこともできます。

熱電モジュールの写真

そちらの温度差というものは、どのように作っているのでしょうか。

例えばスマートフォンを使っていると熱くなることがありますよね。
この熱と空気の温度差で発電することが出来ます。
ほかにも人間の体温と空気の温度差や、車のエンジンからでるガスと空気の温度差など、生活の中にある温度差からも発電が可能です。

一定の温度差がないと発電は出来ないのでしょうか。

発電量に差はありますが、実は1℃からでも発電が可能です。
そして温度差が10℃、100℃と大きくなるにつれて発電量も大きくなります。
我々の行っている開発では80℃程度の温度差を利用しています。

【熱電変換】
温度差から発電をする原理(熱電発電)
【熱電変換】
冷却する(電気を流して温度差を作る)原理

株式会社白山の熱電開発ならではの強み

既に熱電変換関連の製品に関しては、他社で製品化されているものがあると思います。白山の熱電開発ならではの強みについて教えてください。

これまで他社で製品化された熱電モジュールの商品の具体例を出すと小型で音がしない冷蔵庫や、PCR検査装置などがあります。
他には熱中症対策として、襟元に着用し首元などを冷やす製品も販売されています。
従来の熱電変換と比べた、当社ならではの強みは大きく分けて2つあります。

1つ目は熱電モジュールに使用している『材料』です。従来のモジュールには材料にレアメタルを使用しています。
レアメタルは世界的に埋蔵量がすくなく希少かつ高価です。
当社の製品は『マグネシウム、シリコン、スズ』を使用しているため安価かつ、一般的にとれる豊富な材料を使用することで持続可能な社会にも貢献できます。

2つ目は『熱源に蒸気を使った発電のシステム(排熱発電システム)』です。
これまで体温やお湯の温度差を利用した発電はありましたが、蒸気を使った発電システムはほとんどありませんでした。
排熱発電システムでは工場や温泉から出るいらなくなった蒸気(排熱)と、水の間に生まれる温度差を利用して発電を行っています。

排熱発電の原理

ほかにも、『自社でオリジナルの材料を作る』、『モジュールを作る』、『モジュールを利用したシステムを作る』これらを全て1社で行っている会社はほとんどありません。
それを全て1社で行っているという点も強みの一つですね。

これらの強みはどの様な場面で特に役に立つと思いますか。

レアメタルを使ったモジュールはどうしても費用が高くなってしまうため、利用したくても出来ないことがあると思います。
例えば、『車の台数分モジュールを用意して欲しい』といわれても高価な上に、資源が枯渇してしまうため、なかなか実現は難しいですよね。
しかし、当社の熱電モジュールは安価かつ、材料が豊富で沢山作ることができるので、お役に立てると思います。

また、排熱(蒸気)を利用した発電システムは、特に工場で活躍できるのではないかと思います。
例えば食品工場では加熱をして材料を混ぜる過程で沢山の蒸気を利用しています。
その際、全ての利用が終わった蒸気排熱を再利用できるといいのですがどうしても余ってしまい捨てられてしまう蒸気があります。
それらを利用して発電を行えば効率よく工場のエネルギーを使うことが出来ます。

ほかにも地熱を利用し発電する場合、熱電モジュールは小さなもので済むため、地下から温泉を汲み出す必要がありません。一般的に地熱を利用した発電は大きな設備が必要で、使用熱量も多く温泉が枯渇する恐れもあります。
しかし、当社の技術では地熱がある場所から噴き出している蒸気からも発電することが出来ます。

インタビュー風景①

熱電開発に至った経緯

熱電開発に至った経緯を教えてください。

熱電開発は10年ほど前、私が入社する前から始まりました。
昔、今でも当社と取引のある会社に材料の研究を行っている方がいました。
その方が元々いた会社を退職後、個人で熱電材料の研究をしていまして、その中で『白山の装置で材料を作ったら性能が良くなるのでは?』ということで、石川工場にある装置を借りにきて材料を作りました。

材料を作ったら終わりではなく、材料が良いものであるか見る必要があったため現在、熱電開発を行っている石川県工業試験場にある、性能を測ることが出来る装置を使いました。そこで材料の性能を見たら良い数値が出たんです。
その結果、『会社の中で新規事業として熱電開発をやったら面白いのではないか』と話にあがり熱電開発事業が始まりました。

最初は1人の研究者の発想から始まった熱電開発ですが、現在では人数も増え、共同研究先とも協力しながら開発を進めています。

熱電開発を行う中で特に苦労したこと

熱電開発を行っている中で特に苦労したことを教えてください。

熱電材料をゼロから作ることに苦労しました。
熱電材料に限らず材料をゼロから作ることは非常に大変で、安定もしなければ再現も出来ないことが多いです。少し条件を変えるだけでも結果が変わってしまうところが面白い所であり、難しい所でもあります。
例えば、材料の粉の混ぜ方ひとつ違うだけでも全く違った性能が出てしまいます。

インタビュー風景②

一般的に、研究開発を行う際は材料をゼロから作ることが多いのでしょうか。

企業で熱電材料を作る時、多くの場合は新しいものを作ることになってもどこかの研究機関や、大学で作ったものを移管して自分たちで作っていくことが多いです。
そのため、当社のように熱電モジュールの材料を全てゼロから作る方が珍しいと思います。

特殊な材料なので出来た材料の性能で良い性能が出たか測定したり、悪かった場合なぜ悪いかを解析しますがその良し悪しを測ること自体がまず難しいです。
そこで共同研究先や、装置メーカーと協力し、教えてもらいながら自分たちも日々勉強をして研究に取り組んでいます。

現在の開発状況と今後の展望

現在の開発状況を教えてください。

現在の状況は、熱電モジュールを2024年3月までにまずはサンプルを提供できるように準備をしています。
そこから2024年4月にサンプルの販売を行う予定で進めています。
また、排熱発電システムについては現在、国の補助プロジェクト(※1)や石川県のプロジェクト(※2)を走らせています。

※1:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラムより支援を頂いています。(2021年度採択)
省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム詳細ページ 

※2:公益財団法人石川県産業創出支援機構(ISICO)のいしかわ次世代産業創造ファンド事業に研究テーマ『排熱を利用したIoT向け熱電独立電源システム開発』にて採択されました。(2022年度採択)
いしかわ次世代産業創造ファンド事業 採択案件一覧 詳細ページ

排熱発電を実証するために実際に熱源があるお客様の所へ行き、システムを入れて発電を行うことを予定しています。
蒸気で発電するシステムもテスト的に販売し、より大きな実証を行っていく予定です。こちらについては今年(2023年)の秋頃に販売が出来る製品も考えています。

製品化できるような結果は現段階で出ているのでしょうか。

製品化となると準備に必要なものが非常に多いです。そして、来年(2024年) の4月に製品を出したとしても、ゼロから作っているものからいきなり完成品が出てくるかについては何とも言えない所ではあります。
第一にお客様と一緒にどの様なものを作っていくべきか共有しながら製品化を行っていきたいと思っています。
蒸気で発電するシステムについてはある程度しっかりした基盤が出来ているため、なるべく早くお客様に展開したいと考えています。

熱電モジュールや、排熱発電に興味を持って下さるお客様は多いのでしょうか。

すごく多いですね。
熱電モジュールについて、材料にレアメタルを使用していることを課題と感じているお客様は少なくないです。『いつ完成しますか』といった連絡もいただいていますね。

排熱発電システムについては蒸気を使った排熱を出している工場や、地熱、温泉業界の方を中心に様々な方から『完成したらぜひ使ってみたい』というお声をいただいています。
期待の声にお応えできるように、早く実現しないといけないなと感じています。

インタビューの様子③

まとめ

いかがでしたでしょうか。
熱電変換技術を利用すると、温度差を利用した発電や、電気を通すことで冷やす、温めることができます。当社ならではのレアメタルフリー材料を使用した熱電モジュールや、排熱発電システムがどういったものなのか、少しでも知っていただければ幸いです。


これから製品化に向けて動いていく熱電開発の動きに、皆さまぜひご注目ください。

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